リアムは自分の手にある、サファイア魔鉱石を見つめた。

「俺はずっと、自分の意のままに操れる道具を、オリバーは作ったんだと思っていた」

 イライジャは「最初、私もそう思いました」と答えた。

「オリバー大公殿下は目的のためなら手段を選ばない、非道で残忍なお方ですが、根本にあるのは誰かのため。愛情深いと思います」

 リアムは、イライジャにあらためて言われて、複雑な心境になった。

「オリバー大公はやはり陛下を、……リアムのことが大切だった。凍化の原因に気づき、すぐに対応した。リアムに長く生きて欲しいと、思っていらっしゃったんですね」

 ミーシャの言葉が胸に沁みる。

 視線をオリバーに向けると、合流した騎士団が馬車で運びだそうとしているところだった。
「陛下。オリバー大公の処分、どうされますか?」

 リアムはサファイア魔鉱石をぎゅっと握った。

「愛する人を復活させるのが目的だった。そして、……俺を生かそうとしてくれていたのは理解した。だが、だからと言って、多少の犠牲は問わないやり方をした叔父を、手放しで許すことはできない。回復したら重い罰を受けてもらう。その上で、……生きてもらう」

 イライジャはリアムに深く頭をさげた。顔をあげた彼は、すっきりとした顔だった。

「陛下が氷の狼に命じたので、結界の異常はおそらく大丈夫かと思いますが、念のため私が確認して参ります」
「イライジャ、頼んだ」

 残すは水と氷に沈んだ帝都を救うのみだ。

「ミーシャ、遅くなった。帝都へ急ごう」

 リアムはミーシャとともに炎の鳥の背に乗った。