「炎の鳥で帝都に向かってもらってもいいか。帝都の被害の確認後、その足で、流氷の結界のようすを見に行く」
「わかりました。行きましょう」

「ミーシャさまと、陛下。少々お待ちください」

 炎の鳥の背に乗ろうとしていると、オリバーの治療をひとまず終えたイライジャが近寄ってきた。

「結界については、氷の狼をお使い下さい」

 イライジャの言葉にリアムとミーシャは顔を見合わせた。

「陛下。今、サファイア魔鉱石はお持ちですか?」
「一つ、持っている」

 オリバーがジーンの父親に贈ったものだ。

「陛下なら、その魔鉱石で、氷の狼を操れるはずです」
「狼には直接触れないとだめなんじゃないのですか?」

 ミーシャの質問にイライジャは、「陛下は特別です」と答えた。

「オリバー大公殿下は、サファイア魔鉱石を陛下のために作ったんです」
「それは何度も聞いた。だからなんだ」
「今回のサファイア魔鉱石は、リアムさまの魔力の影響化で作っているんですよ」

 イライジャは流氷の結界を指さした。

「オリバー大公殿下はサファイア魔鉱石を陛下の作った結界内に、長く浸しておられました。陛下の魔力を溶かし圧縮して作るのが目的だったようです」

 相変わらず勝手なことをするなと思いながらもリアムはイライジャに聞いた。

「額にサファイア魔鉱石がある氷の狼は、俺の魔力で動いていると? それならばなぜさっき俺を襲ってきた?」
「襲われたんですか?」と驚きながらもイライジャは説明を続けた。

「おそらくですが、狼を作ったオリバー大公殿下は単純な命令『結界を守れ』しか、氷の狼にはしていないんだと思います。そのせいで、敵味方関係なく、近寄る者を除外しようとする。陛下がちゃんと命令すれば、むやみやたらに襲うこともなくなると思います」

 イライジャは「憶測ですが」と付け加えた。

「……それで、イライジャさまは私にサファイア魔鉱石は燃やして壊さないほうがいいって言ったんですね」
 ミーシャの問いにイライジャは頷いた。