「リアム、喜びに浸っている時間はないんでしょ?」
「ああ。今ごろ帝都は氷と水の被害に合っているはず。それをなんとかしなければならない」
「危機が完全に去ったわけじゃない……」

 ミーシャはつらそうに顔を歪めた。手をあげて炎の鳥を呼ぶ。

「ひとまず、ここを抜けて外のさようすを見に行こう。リアム、乗って」

 炎の鳥の背に、ミーシャは先に乗る。

「……馬の次は炎の鳥に跨がるか。本当に、変わった令嬢だな」
「緊急事態なんだもの。しかたないでしょ。早く!」

 顔を赤らめて怒る彼女もかわいい。リアムはミーシャの指示に従い、大きな炎の鳥の背に飛び乗った。

「馬に乗るみたいに足は広げないでね。翼に触らないように」
「わかった」

 片膝をつき、しゃがむように座る。後ろから抱きつくと言うより、彼女にしがみつく。

 炎の鳥が翼を広げる。天井に空いた大きな穴に向かって、力強く飛び立った。