「この下に……大事な、#何か__・__#があるのね?」

 オリバーは、肯定も否定もしなかった。ただ、瞳に哀しみを滲ませながらやさしく笑った。

「リアム、選べ。……大事なのは民か、それとも愛する者か」

 オリバーの表情は険しいものに戻っていた。
 ミーシャはリアムの殺気を直に感じた。下から覗く彼の碧い瞳が怒りに染まっていく。
 
「炎の鳥よ、氷の壁を溶かせ」

  大きな炎の鳥が現われた。一気に空気が暖められていく。

「させないッ!」

 リアムが全魔力を放出するようにすごい量の氷と雪を放った。オリバーは攻撃からノアを庇うと氷の壁の一部を溶かし、その奥へと進み消えてしまった。

「リア、ム……」

 ミーシャの視界は狭く、霞はじめていた。よく見えないが、氷の壁の向こうに地下へと続く道があるようだ。

「ミーシャ」

 リアムは二人を追いかけずにミーシャをぎゅっと抱きしめた。

『――選べ。大事なのは民か、それとも愛する者か』

「リア……、私はいい。魔鉱石が、奪われたから……」

 ――追いかけて。
 私が作った魔鉱石で、再びたくさんの人に被害が出る。それだけは、絶対に嫌だ。

 ミーシャは声をふり搾った。

「洪水を、とめてッ……!」

 ――お願いリアム。私より、民を選んで!