「リアムのほうが美しいです。陽に照らされて輝く銀色の髪と、神秘的な碧い瞳、男の人なのにすべすべの肌、きれいで、うらやましいです」
「うらやましがる必要はない。俺のすべてはミーシャの物だから」

 そういうことをさらっと言わないでほしい。心臓に悪い。向けられる瞳はやさしくて、朝から溶けてしまいそうだ。
 
 冷酷で無慈悲と言われる氷の皇帝リアムの気性は、実は、とても熱い。

「ミーシャ。すべてが片付いたら、婚約関係をあらためて結ぼうか」

 言葉の意味を咀嚼するために目を瞬いた。

「俺が送った手紙。治療が済んだら帰るという内容の契約に、きみは変えてしまった。……今すぐ破棄して、新しい物を結びたい」

 ようやく理解して思わず、くすっと笑った。

「……なにがおかしい」

 少し不機嫌な顔でリアムはミーシャを見た。そんな表情ですら愛おしい。

「あの時は、誰かとリアムが幸せになればいいって思っていたから。本当はもう、リアムのこと好きになっていたのに。私ったら、ばかだなって思っただけよ」

 ミーシャは愛しい人の頬を、包み込むように触れた。

「治療が済んでも帰らないわ」

 にこりとほほえむと、リアムもほほえみを返してくれた。

「ずっと、特別な人を作るつもりはなかった」
「言ったでしょう? その考え、変えさせてみせるって」

 リアムは眉尻を下げて笑った。

「きみに、完敗だ。……結婚の申し込み(プロポーズ)は、色んな準備を済ませて、また日をあらためさせて」

 出会ったころと変わらずに、誠実な人だと思った。彼に頷きをかえす。

「私は、リアムの傍にいられるなら、どんな形でもいいよ」
「きみが傍にいてくれるなら、凍化病は克服できる。……長い時を共にしたいから、今度は絶対に、俺より先に死ぬな」

 切実な声と碧い瞳だった。胸が押しつぶされそうなほど痛い。ミーシャは自分から彼にキスをした。

「何度でも約束する。あなたの傍を離れない」

 ――あなたが安心するまで、何回でも言葉にする。