一度、深く息を吸ってから伝えた。

「私もです。あの夜、リアムに会ったときから私は、あなたに恋をした。好きです。ずっと、これからも、この先も……!」

 リアムはふっと嬉しそうに破顔すると、手を解いた。

「抱きしめてもいい?」

 その問いに応える代わりに、ミーシャは彼の胸に飛びこんだ。ぎゅっと抱きしめられて、涙が次々と零れていく。

 リアムが愛しい。想い伝わるように、彼を強く抱きしめ返した。
 彼はミーシャの頭をやさしく撫でると、固い声で言った。

「今はカルディア国やオリバーの件、自分の病について、問題が山積している。だけど約束する。すべて片付けて、ミーシャを守る。俺と一緒に、幸せになる未来について、考えてもらえないだろうか?」

 とくとくと胸の鼓動が喜びを謳っている。自分が望むことを相手も望んでくれている。なんて、尊いのだろう。このままなにもかも委ねてしまいたい。

 そう思ったが、ミーシャはまだ、彼に伝えていないことがある。ぐっと勇気を溜めてから、話しかけた。

「リアム。実は私、あなたに話さないといけないことがあります」

 彼は「なに?」とやさしく聞いてくれた。
 胸がばくばくと暴れはじめる。ゆっくり呼吸を繰りかえして、心を整える。決意を固めてから顔をあげた。

 見あげたミーシャの瞳に、美しい世界が飛びこんできた。

「……見て。あれって、オーロラだよね?」

 リアムも空を見あげた。

「オーロラも、初めて?」
「はい……初めてです。こんなに、きれいだなんて……!」

 息を飲む美しさだった。
 満天の星空と、揺らめく光のカーテン。赤や紫、緑へと輝きながら流れるように色を変えていく。
 空のアートにミーシャは一瞬で心奪われた。

「私、オーロラをずっと見てみたかったの。リアムが雪を止め、雲を払ってくれたおかげですね。……すごく神秘的。……すてきな景色を見せてくれてありがとう!」

 お礼を伝えると、リアムは子どものころのように、満面の笑顔をミーシャに見せた。

「それで、話しって?」

 しばらく空の天体ショーを眺めたあと、リアムはミーシャに聞いた。もう一度呼吸を整え、身体を彼に向ける。

「実は私……」

 意を決めて口を開いた刹那、狼の遠吠えが夜空に轟いた。