そして三つ目が環境。氷の国グレシャー帝国にいるだけで、リアムの力は増した。

 クレアはリアムに魔力のコントロールを教えながら、『炎の鳥』を使って器の研究を続け、やっと魔鉱石を完成させた。

「原材料に火属性のガーネット鉱石を使ったから、この『魔鉱石』にリアムの力を映すことができなくて残念だけど、必ず氷属性の鉱石を見つけ、リアム専用の魔鉱石を作ってあげるからね」

「はい、師匠。ありがとうございます」

 クレアはリアムに力の使い方以外にも、薬草や、鉱石、天体や天気の読み方を教えた。
 フルラで学ぶことは、帝王学よりも楽しいものだったらしく、リアムは喜んで吸収していった。
 

「おっ邪魔しまーす。殿下、お疲れさま~~」
「……騒がしい奴がきた」

 笑顔でドアを開けたのは、リアムと幼なじみのジーンだ。 彼の後ろには真顔のイライジャもいる。二人は一昨年ほど前から頻繁にフルラ国へ通うようになった。

「あれ、それって魔鉱石ですか? ついに完成したんですか?」

 ジーンはクレアの机の上にある魔鉱石をまじまじと眺めた。

「そう。完成させたわ」
「どうやって作るんですか? いい加減、教えてくださいよ」
「内緒。だけどそうね。ヒントは……高温で圧縮、かな?」
「……それ、宝石のでき方ですよね。魔鉱石は、魔力を使うんですよね?」
「だからそれは内緒。秘密です」

 クレアは立ちあがると、魔鉱石を右手のひらに乗せた。

「みんな見てて」

 左手には『炎の鳥』を呼んで留まらせる。炎の鳥は魔鉱石の上に飛び乗ると、揺らめく炎となって消えた。

「はい、リアムどうぞ」

 リアムはクレアから魔鉱石を受け取った。

「石、真っ赤だよ。熱くないの?」
「うーん。温かい、かな」
「ええっ、大丈夫なの? リアム殿下!」
「ジーン、騒ぐなって。大丈夫だから」

 ジーンに向かってリアムは苦笑いを向けた。