「本当に、いいのかしら。私が、この手で、リアムを幸せにしても……」

「いいに決まってます。幸せにして、そしてミーシャさまはこの国、いえ、世界一、幸せにしてもらってください。自分の幸せを望んでください」

 視界が、こみあげてきた涙で歪む。
 ライリーを引き寄せえ抱きしめると、彼女にありがとうと伝えた。

「わたくし、実は先ほど、陛下にきっぱりと振られましたの」

 ミーシャは驚いてライリーから離れるとナタリーを見た。
 目が合った彼女はにこりとほほえんだ。

「俺がこの手で幸せにしたいと思うのミーシャだけ、だそうですよ。物語ではよく魔女は悪役で、虐げられて終わりますが、幸せになる物語があったっていいじゃありませんか」

 ナタリーは、ライリーの手に自分の手を重ねた。

「どうか、ミーシャさまは陛下と、幸せな物語を綴ってくださいませ」

 ナタリーの言葉が、涙を押し出す。心が震え、ミーシャは胸が熱くなるのを感じた。

「ナタリーさま、ありがとう。私、この国にきて、あなたと友だちになれて本当に良かった」
「わたくしもです」

  ミーシャはナタリーのことも抱きしめた。

 涙を拭い、目を閉じる。
 幼少期のかわいいリアムの顔が浮かび、そして、大人になった今のリアムのほほえむ顔が脳裏に裏に浮かんだ。
 呼吸を整えると、ミーシャはゆっくり目を開け、二人を見た。

「二人ともありがとう。おかげで覚悟ができました。私、リアムにすべてを打ち明けます」

 リアムは魔鉱石を諦めろと言っていた。自分に使うつもりはないと。
 だけどやっぱり、他に方法はない。

 自分に自信が持てず、彼を説得するのは無理だと実行に移す前から諦めていた。自分の罪の意識ばかりに捕らわれ、ちゃんと、彼の気持ちを推し量れていなかった。

 ――そんなことでどうする。どうやって彼を救うというの。

「リアムを救い、共に生きる道を、探します」

 もう二度と、彼を悲しませたくない。なにがあろうとリアムを救って見せる。一緒に、幸せをつかみ取りたい。

 ミーシャは、内側から湧き上がる勇気と魔力を感じながら、前を向いた。