「陛下。私、今日も薬草を探しに行こうと思います。その許可を今ください」
「……オリバーの動向がわかるまでは、外出は控えて欲しいが」
「氷の宮殿から出ませんし、陛下の目の届く範囲で行動します」

 難色を示すのはわかっていた。あらかじめ用意していた答えを彼にぶつけた。

「なにかあれば、炎の鳥を飛ばします。決して無理はしません」
「薬草なら、宮殿内の備蓄分を使えばいい」
「それはとてもありがたいですが、全部を使うわけにはいかないでしょう?」
「……薬草、そんなにいるのか?」

 ミーシャはリアムを見ながら「はい」と答えた。

「昨夜、陛下に飲んでいただいた薬草スープ、毎日飲んでいただきたいんです。そのために定期的に材料を入手したいんです」
「昨夜の赤いスープか……。病の緩和は、ミーシャをこうして抱きしめているだけで効果がありそうだが?」
「今はよくても白い結婚が明けたあとは、どうするんですか? スープは苦くて辛くて美味しくなくても、飲み続けていただきます!」

 リアムは苦笑いを浮かべた。

「わかった。飲み続けよう」
「約束ですからね? それと、薬草の材料もですが、懐炉の材料も探そうと思っています。陛下の許可をいただけるなら、宮殿で働く宮仕えのみんなにもぜひ、使っていただきたくて」
「懐炉の増産は賛成だ。まずは宰相のジーンに使わせ、試させたい」
「ありがとうございます! 陛下ならそう言っていただけると思っていました」

 リアムはミーシャの目の前で、やわらかくほほえんだ。

 ――リアム、笑うとあどけなかった子どものころみたいで、少しかわいい。

 彼の笑顔を見て、ふと、髪が金色の皇子が頭を過ぎった。

「陛下。どうしてノア皇子は一人で遊んでいるんですか」
「ノアに、会ったのか?」
「庭で薬草を探した帰りに見かけました。ノア皇子、お友だちと遊びたい年ごろだと思うんです」

 幼少期のリアムの傍に、ジーンやイライジャがいたように、彼にも同世代の仲間がいたほうがいい。

「ノアのことは気にしなくていい」

 少し突き放すような声だった。