もはや五島くんなんて見えていなかった。
 五島くんたちは突然現れた大人のイケメンに圧倒されて、いつの間にか逃げていた。


「あ、あの……!助けてくれてありがとうございました……!」

「いや別に?たまたま通りかかって聞こえただけだし」

「あの!よかったらお名前を教えてくれませんか!?」


 運命の恋だと信じて疑っていなかった私に、彼はニコッと笑う。


「いや無理でしょ」

「え。」

「つーかもしかして、これが運命♡とか思ってないよな?」


 めちゃめちゃ思ってましたけど!?!?


「そうゆうのやめてね。ぶっちゃけ迷惑♡」


 ものすごく笑顔で語尾にハートマークがついてそうな気もするのに、なんだろうこの突き放されてる感じ……。


「よくいるんだよね。ちょっと助けたり優しくしたりするだけで運命って勘違いする女。
マジで勘弁だわ」

「…………。」

「特に君とは、絶対ないから」


 運命だと思っていた私の恋は、恋になる前に終わった。


「じゃあ、またね」


 煙草の匂いを漂わせ、その人は立ち去って行く。

「またね」ってどういうこと……??
 絶対ないって言うくせに、また会えるみたいな言い方。

 軽率に運命かもって思っちゃうのが私のダメなところかもしれないけど、そっちだってそんな風に期待持たせること言わなくて良くない?