陽生先生のキケンな恋愛指導



 ストーカーと思われても仕方ないけど、思わず後を付けてしまった。

 だって気になる……。
 まさか子どもがいるとは思ってなかった。


「えっ……」


 私は絶句した。
 先生の前に現れたのは、一人の女性だった。

 男の子が女性を見た途端、先生の手を離れて駆け出していったところを見ると、きっとあの子のお母さんなのだろう。

 え、つまり……先生の奥さん?

 女性の顔はよく見えない。髪が長いことだけわかる。
 でも多分、綺麗な人なんだと思う。


「…………。」


 ……なんだ、先生結婚してるんじゃん。

 結婚してるのに、子どももいるのに「俺のこと好きになってみたら」とか言えちゃうんだ。
 大人ってそういうもの?

 私が子どもだから?
 私があまりに哀れだったから先生なりの親切心だったとか?

 ……いや、そんなの全然親切じゃない。
 最悪だよ。


 その後どうやって帰宅したのか覚えてない。
 いつの間にか自宅に着いていた。

 夕飯は大好物のステーキだったのに、食欲がなくて先に寝るって言ってしまった。
 お姉ちゃんたちにものすごく心配された。


「……っ、うう…っ…」


――そうか、私は失恋したんだ。

 今なら引き返せる、なんて遅かったんだ。

 もうとっくに先生のことが好きだった。