陽生先生のキケンな恋愛指導



 すると先生は、いつものように煙草に火をつけながら真顔で言った。


「いや別に?あんたの方こそちゃんとついてこようとしてるじゃん」

「え、まあ……」

「そうゆうの、教師側からすると結構嬉しいもんだよ」


 ……ああ、まただ。

 先生に微笑みかけられると、胸がザワザワしてどうしていいかわからなくなる。


「――っと、もうこんな時間か。間宮仁胡、車で送ってやるよ」

「ええっ!?そんなの悪いですよ!!」

「勉強頑張ったご褒美ってことで――トクベツな?」

「……っ!!」


 またそんなトクベツ扱いみたいなこと言うのが、ずるい……!

 ダメだと思えば思う程、先生の一挙一動にドキドキさせられてしまう。

 先生は先生としての仕事をしているだけなのに。
ときめいちゃダメなのに。

 好きになったらダメなのに――……っ!!


「おーい、何してんだ?乗らねぇの?」

「……失礼します」


 助手席から見る先生の姿は、また違って見える。
 長くて程よく筋肉のある腕がはっきり見えて、薄っすら血管が浮き出ているのまで見えちゃって。

 ハンドルを握る横顔がカッコ良すぎて、どうしてもチラチラ見ちゃう。


「おい、見惚れるな」

「み、見惚れてませんっ!安全運転か気になっただけです!」

「生意気」


 そうやって笑いかけるのは私だけじゃないですよね――?

 なのにトクベツ扱いされてるのかなって気になってしまう。
 本当にずるくてワルい大人ですね、先生は。

 この沼にはハマりたくないと思う気持ちと裏腹に、私の気持ちはどんどん先生に向いていた。