陽生先生のキケンな恋愛指導



 うそうそうそ!!
 軽い気持ちで言ったのにご褒美くれるの!?

 えっ何か奢ってくれるとか!?
 それとも何かラブ♡的な感じ!?

 自分から言い出したくせにめっちゃ心臓バクバクしてきた……!!


「――はい、じゃあ114ページからな」

「………え?」


 広げられた教科書とノート。
 ドキドキなんてどこにもなかった。


「あの、先生……?」

「なんだよ。ご褒美にテスト勉強見てやるから」

「なんでですか!?」

「試験近いからだろ」


 ド正論返されて何も言い返せない。
 そうだこの人、一応教師なんだった……。


「何?どんなご褒美期待してたわけ?」

「あ、いや別に……」

「じゃあとっとと始めるぞ。まずこの英文訳してみろ」

「はあ……」


 チッチッチッチッチッ。

 時計の音が鳴り響く。やたらと大きく聞こえる程、準備室は静まり返っていた。

――全っっっ然わからない……!!

 何これ、人の名前がジョンってことしかわからないんだけど。
 ジョンは何をしたの!?
 何を伝えようとしているの!?


「……せんせぇ」

「できたか?」

「何一つわかりません……」

「マジか」

「ジョンは一体何がしたいんですか!?」

「…………。」


 先生は黙り込んでしまった。
 指を口元に置いて思案する横顔があまりにも美しすぎる。