「この期に及んでまだ何を…」

「安心しろよ。俺は茉莉花が道を踏み外さないように指導するだけだ」

また、ファーストネームで呼びやがった。

「とにかく、待ってるからさっさと来ること」

そう言うと、電話は一方的に切れた。

ふざけてる…。

しかし、先生だってもし本当に生徒に手を出せば、クビどころか、全国ニュースにだってなるだろうし、もう普通の暮らしは送れなくなるはず。

だったら、予定通り、惚れた振りと誘惑作戦で先生を怖気づかせてやる…。


面倒で仕方ないとは思うが、支度をして家を出た。

そう言えば、教師というのは、夏休みも毎日出勤しているらしいが、先生は新任のくせに、一体何をしているのやら。

他の教師は、まさか先生が毎日、私の指導をしているなどとは夢にも思わないだろうし…。