「あの空に走ってる電車。君には見える?」



そう聞かれて振り返った。

そこには、見たことのない、同い年くらいの男の子が立っていた。




「僕は柳紗都(やなぎさと)。あの電車に乗りたくて、ここまで来た。」




不思議な男の子だった。目が離せなかった。




「私は森宮鈴(もりみやすず)。空を見ていたら、あの電車を見つけて、追いかけてきたの。あなたと一緒。」




話して走って、話して走って、励まし合いながら走り続けて、いつのまに私たちは手を繋ぎながら走っていた。


暖かくて、安心する手だった。


でも、結局電車には追いつけずに、朝日が登りだした。
朝日が昇るとともに、電車は薄くなっていった。


紗都と走り続けた長い道のりを歩いて帰った。


家に帰ると、親にものすごく怒られた。
心配したのよと抱きしめられた。



でも諦められなかった。それからもまた、紗都と何度も探しに行った。
でもあの電車に乗れることはなかった。



そのまま私たちは大人になって、大人になるにつれて電車は見えなくなっていった。



でも、ただ一つ、ただ一つだけ、
同じ目的のために一緒にいた紗都との関係だけは変わった。



私たちは25歳になっていた。



「鈴。俺、初めて会って鈴と手を繋いだ時にさ、すごい優しくて安心感のある手だと思ったんだ。

その時に不思議と、鈴はこれからの僕の人生で、大事な人になるんだろうなって思った。

そして今僕は、鈴と、これからは夫婦として一緒に過ごしていきたい。

だから鈴!俺と結婚してください!」



私は真っ赤になった耳と頬でうなずく。



「私も紗都の手は暖かくて安心感があった。
私も紗都と一緒に、これからも笑い合っていたいです。

好きだよ。これからよろしくお願いします!」



あの電車は、私たちを引き合わせてくれた。

きっともう、あの電車を見ることはないと思う。でも、今はあの電車は、奇跡と愛を運ぶ電車だったのかなって思える。



ありがとう。銀河鉄道。