都合のつく日は、マリアベルが試合を見に来てくれることもあるのだ。
 ちなみに、今日は試合終了後に気が付いたが、彼女がいると先にわかっている場合、アーロンの気迫はとんでもないことになる。
 後からわかったパターンだったから、今日の対戦相手はラッキーだ。
 
「勝ったよ!」

 アーロンが手を振ると、マリアベルもひらひらと手を振り返してくれた。

――このやりとり、婚約者っぽい!

 自分に挑んできた者に勝った男と、そんな男に、客席からにこやかに手を振る女性。
 婚約者っぽさあふれるやりとりに、アーロンは幸福感から口元を緩ませた。

 これらの試合でアーロンが勝とうが負けようが、二人の婚約にはなんの支障もない。
 ただただ、アーロンに妖精姫マリアベルをとられた男たちが、己の想いを清算するために挑んできているだけだ。
 だから、もしもアーロンが負けてしまっても、特に問題はないのだが……。
 当然、彼は負ける気などなかったし、実際、全勝していた。
 腕の立つものが繰り返し挑んできたりもしているが、やはり快勝。
 長年の片思いが実を結び、想い人との婚約を実現させたアーロン。あらゆる面で絶好調であった。

 まだ、本当の意味でマリアベルに気持ちが伝わっている様子はないが、婚約を拒まれることも、やっぱり解消したいと言われることもなく。
 アーロンは、これから彼女との仲をもっと深め、自分の好意も理解してもらうつもりで、気分良く過ごしていた。