「ま、魔法特待の方たちと、少しお話したかったのですわ。……ですが、お昼中のようでしたし、日を改めます」

 そう言うと、クラリスとその取り巻きたちはささっと立ち去った。
 去り際、クラリスはきっとマリアベルを睨みつける。

 クラリスは、入学直後から――いや、その前から、マリアベルのことが嫌いだった。
 マリアベル・マニフィカは、使用人すら雇えないような貧乏伯爵家の娘のくせに、アーロンに気に入られている。

 家の事情で、ほとんど領地から出てこなかったマリアベルであるが、アーロンは違う。
 公爵家の嫡男として、子供同士の交流の場にも出ていたし、各家との繋がりも持っていた。
 容姿端麗、文武両道。武の名門の出で、武闘派だというのに物腰柔らかく、座学の成績も優秀なアーロンは、学院入学前から女子たちの憧れの的だったのだ。
 クラリスも例外でなく、幼いころからアーロンに憧れていた。
 アーロンは強く逞しく、それでいて美形で優しい、女の子たちの理想の王子様のような存在なのである。
 自身が強すぎるために、「アーロン様に守られたい!」みたいな気持ちのないマリアベルの感覚が、ちょっとぶっ壊れているだけだ。