「ベル。この男にそんなにかしこまる必要はないよ。ただの魔法オタクだから」
「まほうおたく」
「そう! 僕は魔法が大好きでねえ! だからもちろん、魔法の名手のきみにも興味があるわけ。どう? 魔法研究会、入らない?」
「ええと……どういったかつど」
「聞いたよ~! 詠唱が歌なんだって? どうやってるの? 今ここでできる? 魔法陣なしや無詠唱もいけるって聞いたんだけど、それ、ほんと? 誰に教わったの? マニフィカ家は魔法の家系じゃないよね? 独学? 独学なら、勉強に使ったのはどの本?」
「あ、あの」
「家族にも魔力の高い人がいるの? それともきみだけ? 弟がいるらしいけど、弟さんはどう? 魔法使える? 強い?」

 怒涛の質問攻めに、流石のマリアベルも「あわ……あわわ……」状態である。
 魔法研究会について聞きたいのに、質問にも答えたいのに、ミゲルがとまらない……!
 アーロンはアーロンで、こんなにもマリアベルがたじたじなところは見たことがなかったため、「ベルが引いてる……!?」と驚いて、止めに入るのが遅れてしまった。

「ミゲル。いい加減にしろ。ベルが困ってる」
 
 しかし流石に、このままにもしておけず。
 アーロンが軽くミゲルの頭を叩くと、ようやくミゲルの暴走が収まった。

「いったいなあ……暴力はんたーい」
「こうでもしないと、止まらないだろ。ごめんね、べ……る……」

 今度は、アーロンがびしっと固まる。
 何故なら、マリアベルがささっとアーロンの後ろに隠れたからである。
 アーロンの腕に手をおき、彼の背からそっと顔を出して、ミゲルの様子をうかがっている。
 初対面の男性にぐいぐいこられて、マリアベルもちょっと怖かったのだ。
 マリアベルに盾にされたアーロンはといえば。

――頼られた……!?

 と、大感激していた。