「お昼中にごめんねえ! 僕はミゲル・ミエト。魔法研究会の会長さ!」
「魔法、研究会……?」
「そう! きみ、魔法特待だろ? 領地では魔物をばっさばさ倒し、王立学院にも特待生として認められるほどの実力……。僕はねえ……ずっと前から、きみに興味があってねえ……」

 ミゲルと名乗った男子生徒は、興奮した様子でずいずいとマリアベルに近づいてくる。
 息は荒く、紫の目も爛々と輝いて。
 流石のマリアベルも、ちょっと後ろに身体がのけぞった。

「ミゲル。近い」

 アーロンはそんなミゲルの襟首を掴み、マリアベルから引き離した。
 ぐい、とミゲルと引っ張るアーロンの表情は、氷のように冷たい。

「ベルにそれ以上近づくな」
「おー怖い怖い」

 ミゲルがあっははと愉快そうに笑うものだから、アーロンが凄む。 
 彼に柔らかな笑顔ばかり向けられているマリアベルは、「アーロン様ってこんな顔もするんだ」とちょっと感心してしまった。

「どうしてもと言うから紹介してやったんだぞ……? ベルを怖がらせるなら、この話はなしだ」
「怖がらせたのは悪かったけど、どうして自分に決定権があると思ってるのさ。決めるのはマリアベル嬢自身だよ」
「くっ……」

 アーロンが悔しそうに顔を歪める。
 
「というかきみさ、なんで最近制服なの? 前は私服だったよね?」
「その話、今、関係あるか?」
「ないねえ」
「っ……!」

 いつもにこやかなアーロンが、顔をひきつらせた。