学園に到着し、馬車が停止する。
 馬車で登校する生徒も多いため、門をくぐってすぐのエリアは広く作られている。
 アーロンが先におりて、マリアベルに手を差し出した。

「なんだか、王子様みたいです」

 そんなことを言って微笑んで、素直に手を重ねてくれる彼女が愛おしくてたまらない。
 でれっでれのアーロンだったが、マリアベルが馬車から降りたとたん、周囲の学生たちがざわめき始めたことを感じ取る。
 女生徒に大人気だというのに、興味をもつそぶりのないアーロンが、女子とともに登校した。
 それだけでも、学園的には大ニュース。
 なのに、その相手がとんでもない美少女だったものだから。
 みながアーロンとマリアベルに注目した。

「あの子、誰だろう」
「きれい……」

 生徒たちの、そんな言葉が耳に届く。
 この時点で、アーロンは気が付いた。

――ベル、この学園でかなりモテてしまうのでは!?

 と。
 浮かれてはしゃいで、大好きな子を磨きまくった結果、マリアベルは登校初日に「美少女がきたぞー!」と有名になってしまった。
 自分だけが知る、可愛い可愛い女の子が、みんなに見つかってしまった。
 マリアベルはもう、自分だけのお姫様ではない。
 
「じゃあ、またあとで……」

 これから入学式を迎える一年生のマリアベルと、二年生のアーロン。
 学園内で、ずっと一緒にはいられない。
 別れるマリアベルににこやかに手を振りながらも、アーロンはこれからのことを考え、胃を痛めた。