「ドレスが、この一着しかなくてですね……。アーロン様に恥ずかしい思いをさせてしまうのではと……」
「それも心配いらないよ。パートナーとして、こちらで用意させて欲しい」
「えっ、そんな」
「ああ、あと、着付けや髪のセットの人員も、アークライト家から派遣できるよ。うちには姉と妹がいるからね。慣れてる使用人も多いんだ」
「ええ……!?」
「肌や髪の手入れに関しても、うちに任せて欲しい。本番の日だけでなんとかなるものでもないだろうから、パーティーの少し前から、手入れのためのメイドを通わせるよ」
「そこまで……!?」

 事前の手入れまでしてくれると聞いて、マリアベルは、思った。
 貴族のお嬢さんとして、私ってそんなにやばい感じ? と。
 いやまあたしかに、貧乏だし、美の追求なんてしてこなかったしで、マリアベルの髪や肌は美しいとは言えないだろう。
 髪はぱさついてるし、日によってはもさもさするし。肌ももちもちすべすべなんかじゃない。
 しかしそこまで手厚くされると、嬉しいやら悲しいやらである。

「遠慮する必要はないよ。パートナーなんだから!」
「はい……。ありがとう、ございます」

 パートナーの部分を強調し、アーロンはにっこにこだ。
 アーロンとしては、人生で一度のパーティーで好きな子をエスコートする権利を手に入れて、ちょっとはしゃいじゃっただけなのだが。
 マリアベルは、「私はそこまでしてもらわないと、アーロン様の隣に立てない女……!」と、ちょっと涙目になっていた。