他の女性との仲を疑われ、不安にさせてしまった焦りと、嫉妬! ベルが! 嫉妬! そんな感情を! 僕に! とファンファーレが鳴り響く状態の両方が、アーロンに同時に襲い来る。
 ずっとずっと大好きだった人に避けられたショック、からの不安にさせてしまった申し訳なさと焦り、不安になったり嫉妬したりするような感情を自分に向けてくれていたんだ! と判明した喜び。
 この帰り道のアーロンは、頭の中が大変忙しかった。

 嬉しさもあるものの、まずは誤解を解くべきだろう。
 そう判断し、アーロンは「自分と他の女性が話す場面を見てもやもやしている婚約者」に、説明を始めていく。

「……ベル。今日の合同授業で、僕が話していた女性はリリーナ。僕と同じ2年生で、伯爵家のお嬢さん。たしかに、婚約者候補だったこともある。けれど、きみが心配するようなことはなにもないよ。僕が結婚したいと思うのも、好きなのも、きみ一人だけ」
「……ですが、ずいぶん親しそう、でしたよね……?」
「リリーナは、ミゲルの婚約者なんだ。僕らは、剣のアークライト家と魔法のミエト家、なんて言われて比べられたり、競わされたりすることも多いからね。ミゲルを通じて、リリーナとも話す機会が増えて……。たしかに他の女子よりは親しいけど、あくまで友人だよ」
「ゆう、じん……」
「そう。友人。それも、一応……親友、の婚約者」

 親友、の部分は、やや言いづらそうにしていた。

「一応……?」
「ミゲルを親友と呼ぶのには、少し抵抗があるんだ……。対立しているというほどではないけど、武の家と魔法の家で家同士の衝突もあるしね……。ミゲルはあの感じだし……。この魔法オタクをどう扱ったものかと話しているうちに親しくなったのが、ミゲルの婚約者のリリーナなんだ……」

 アーロンは、溜息をつきながら額を抑えた。
 魔法オタクで、魔法のこととなると止まらない一面を持つミゲルに、アーロンはそれなりに苦労させられてきたのだ。

「アークライト家とミエト家は、何故かセット扱いされることが多くてね……。僕らにも適用されて、子供のころからミゲルのストッパー役を押し付けられてきたんだ……。ミゲルの婚約者のリリーナは、同じ苦労を共有できる仲間、みたいな感じかな……」

 そう語るアーロンは、疲れた様子だった。