合同授業は、2年生が1年生に魔法の使い方について指導をする形で行われる。
 1年生は、同じ苦労をした先輩からの指導を受けることができ、2年生は、他者に教えることで自身の理解を深めることができる。
 毎年好評で、こういった授業は毎年複数回行われている。
 マリアベルは1年生だから、本来なら教わる側。しかし、魔法特待生のマリアベルとコレットは、指導をしたり、実技を披露したりする側にまわっていた。

「魔法陣を簡略化する際は、そのぶん自分の中のイメージをしっかり固めて……」
「正式な手順での発動を何度も繰り返してから、自分の感覚に従って陣や詠唱にアレンジを……」
 
 マリアベルの説明に真剣に耳を傾けるのは、1年生の中でも魔法関連の成績がよい者たちだ。
 それぞれの成績や特性を考慮して、班が決められているのだ。
 アーロンは2年生で、剣技が目立つが魔法の腕も優秀なため、もちろん指導側。
 同じく指導にまわるマリアベルとは、別の班だった。
 婚約者と班が分かれたことなど気にしていなかったし、彼を目で追ったりもしていなかった。
 授業も中盤に差し掛かったころ、女生徒の歓声に誘われて顔を上げ、彼女らの視線の先を見てみれば。そこには、実技を披露するアーロンの姿が。
 剣に炎をまとわせてふるう、彼らしい魔法の使い方だ。

――かっこいい。

 それが、マリアベルの素直な感想だった。他の女生徒も同じ気持ちなようで、きゃあきゃあと黄色い悲鳴をあげている。
 剣技と魔法を融合させた技を披露し終えた彼は、班員の元へと戻っていった。
 その時点で、自身の班に意識を戻そうとしたマリアベルだったが――そのタイミングが少し遅れたために、見てしまった。
 アーロンが、他の女生徒と親し気に話す場面を。

 彼はいつだってにこやかだが、今の彼が浮かべているものは、普段の笑顔とはちょっと違う。
 上手くできただろ、とでも言いたげに、ふふんと悪い顔をしていた。
 相手の女性も、ただの同級生や後輩、といった雰囲気ではなく。
 得意げにするアーロンをおちょくるように、くすくすと笑っていた。

 マリアベルは、二人が醸し出す特別感のある空気に驚き、目を離せなくなってしまった。
 続けて、近くにいた女子たちの「あの二人って、婚約者候補だったこともあるんでしょ?」なんて言葉まで聞こえてきてしまい、マリアベルはぽろりと杖を落とした。