冷徹御曹司は想い続けた傷心部下を激愛で囲って離さない

「凌……統括?」

 話の内容までは聞こえないものの、遠くからでも凌士の激怒が伝わってくる。
 あさひは忍び足で、ふたりのうしろのテーブル席まで近づいた。肩までの高さがあるパーティションで区切られているため、ふたりはあさひが近づいたのには気づかなかった。

 結麻もついてくる。あさひたちはパーティションを盾に、盗み聞きをする形になった。

「——それで、保身のために昇進させたのか。よくも碓井を軽く扱ってくれたな」

 あさひはパーティションの陰で息をのんだ。
 ふたりが話しているのは、あさひの昇進に関する件だった。

 とうとう凌士にも知られてしまった。唇が震えて、結麻の顔を見られない。

「保身じゃない! 僕はただ、あさひに悪かったと思って詫びのために……!」
「昇進させれば、自分の浮気は表沙汰にならないという打算があったんだろうが。見苦しい言い訳をほざくな」
「それは……っ」

 景の声が歪む。あさひは凌士の言葉が真実なのだと知った。
 詫びのための昇進でも許せなかったのに、実は景自身の保身に過ぎなかったなんて。
 いつのまにか唇をきつく噛んでいた。

「けど、浮気も別れたのも後悔してる。結麻のことは、頭がどうかしてたんだ! あさひを嫌いになったわけじゃないし、やり直してもいいと思ってる……っ!」

 隣で結麻の顔が蒼白になっていく。

「——そうはさせない」

 凌士の声は、喚き散らしていた景の動きを一瞬で止めた。