「副賞もいいだろう。俺がほしいくらいだ」

 副賞も豪華だった。海外旅行に招待して現地の子どもたちと交流させたり、研究所が保有しているテスト走行用のサーキットをゴーカートで走行できたりする。車体工場の見学や、如月の全ラインナップの模型セットなどもあった。さすがに車そのものは子どもに贈呈できないが、子どもが喜びそうな内容だ。

「如月モビリティーズのファンが増えそうですね」
「半分は、それが狙いだな」

 あさひは凌士とバンケットへ移動し、引き続きパーティーにも参加した。
 凌士の補佐という名目のため、あさひも会社のネームカードを首から提げている。ふたりで歩いていても不審に思われることはない。パーティーはゲストが子どもだということもあって、堅苦しさはなく、言ってしまえばファミレスのような賑やかさだった。
 意外と……といえば失礼だけれど、子どもに囲まれた凌士を見るのも微笑ましく、あさひは思いのほか楽しい時間を過ごした。

 頃合いを見て、あさひたちはパーティーを切りあげる。
 夜の七時前の空は乾いた空気のおかげなのか透き通っていて、ぽつぽつと星が散っている。クリスマスイブの盛り上がりに比べて、クリスマスの夜はどこか祭りのあとのような雰囲気がある。けれど、あさひの心はほかほかとあたたかい。

「凌士さん、子どもに人気でしたね」
「愛想よくしているつもりはないんだが。なぜ好かれるのかよくわからんな。どう接するべきか毎年考える」

 真顔での返答にくすくすとあさひが笑うと、凌士があさひの手を握る。

「子育てはあさひに指南してもらうか」

 あさひは眉を下げ、隣を歩く凌士を見あげた。

「強引に結婚の話に持っていくのは困ります。頭の整理をするまで、待ってくださるはずじゃなかったんですか?」
「返事は待つ。だがそのあいだ、なにもしないとは言ってない。あさひを落とさなければならんからな」
「そんな!」
「まずはだ。俺との結婚があさひにとっていかにメリットがあるか、だな」

 発想がビジネス寄りだ。さすがだなと思い、あさひはわれに返った。それどころじゃない。