冷徹御曹司は想い続けた傷心部下を激愛で囲って離さない

 グラス作りを体験しようとあさひが提案すると、水のペットボトルを持って戻ってきた凌士が、ベッドに乗り上げながら訊き返した。

「前に電話で話していた、ガラス細工の工房か?」
「はい。この前の紅葉もそうですけど、綺麗なものは見るだけで癒されますから。休息にちょうどいいと思って」

 鍛えられた上半身が間近に迫る。たった今まで抱かれていたのを生々しく感じてしまい、あさひはたまらず、掛け布団を首元まで引き上げる。

「あさひから会いたいと言うから、浮かれたんだが。それを言うつもりだったのか?」
「そうですっ……なのに、こんなの」

 あさひは布団をさらに深く被って身を縮める。
 会う約束を取りつけられたまではよかったけれど、凌士の部屋に上がったが最後、話があと回しになってしまったのだ。
 貪るように抱かれ、胸の辺りにいくつも散らされた赤い痕を思い返し、たちまち体じゅうが熱くなる。
 背後から凌士に抱きしめられた。

「あさひに会いたくてたまらなかったのは、俺だけか? 残念だな。あさひにもそう思われるよう、もっと努力しよう」

 力強い肌のぬくもりに包まれ、胸がぎゅうっとなる。

「わたしも会いたかったです……よ」

 小さく言うと、凌士があさひの背中越しに喉の奥で笑った。口をつけたペットボトルをあさひに渡す。
 あさひも、喉が嗄れていたのに今さらながら気づき、そっと口をつける。凌士のキスの味がした。

「それで、どうですか? ガラス細工は」
「俺も綺麗なものは好きだ」
「よかった! 高温で溶けたガラスを吹いてグラスの形にととのえながら、色を乗せていくんですって。だから、模様もひとつずつ違って……って凌士さん、どうして笑うんですか?」

 忍び笑いをしていた凌士が、笑いを引っこめるとまなざしを優しくした。

「好きだなと思ってな」
「ね、楽しそうでしょう! 予約しておきますね。工房もいろいろあって悩みましたけど、よさそうなところを見つけたんです。自分だけのグラスって、特別感もあって——」
「いや、あさひが綺麗だと思っていた。見るだけで癒やされる」

 あさひはとっさに前を向いた。

「ありがとう……ございます」

 顔が熱くて、凌士の顔を直視できない。凌士がなおも覗きこもうとするので、あさひはとうとう両手で顔を覆う。
 余裕たっぷりの仕草で、凌士が耳朶に触れてくる。