濡れ衣である。
フィーネが階段を落ちたとき、たしかにクラリスは隣にいた。
しかし彼女は、クラリスの後ろでいきなり「やめてください、クラリス様!」と騒いだ後、勝手にひとりで落ちていった。完璧な貴婦人と称えられるクラリスも、さすがに唖然とした。
真実を知っていれば「どの面下げて」と鼻で笑いたくなるもの。だけどフィーネは下手な芝居を続けている。
「やめてください、アルク様……っ。クラリスさまは、ちょっと魔が差しただけなのです。いじわるだって、私が我慢すればいいことなのに……」
「いいや。フィーネは勇気ある告発をしてくれただけだ。君は何にも悪くない」