婚約者にこの仕打ちはいかがなものか。なぜ皇子は腕に栗色の髪の少女を抱えているのか。

 ツッコミたいことは絶えないが、アルク皇子は偉そうに続ける。

「君は友好国の公女であり、私の婚約者だ。だから最大限の敬意をはらってきた。だが、伯爵令嬢フィーネ・レノアを階段から突き落とし、命を奪おうとした。この罪は許されないぞ!」

「誤解です。私は、フィーネ様を突き落としたりしていません」

「フィーネが階段から落ちる前、君たちが言い争う声がしたと報告がある。なにより、君がフィーネを日頃から害していたと、フィーネが涙ながらに告発した。それでもまだしらを切る気か」