「クラリス・リシュテール! 君との婚約を破棄させてもらう!」

 高らかに響く宣言に、リシュテール公国の公女、クラリスはくらりと眩暈を覚えた。

 朝の光を閉じ込めたような金の髪に、澄んだ大空の色をした瞳、完璧に整った美しい面差し。

 十人が見れば十人が褒めたたえる容姿をしているが、クラリスの頬は気の毒なほど蒼ざめている。

 それもそのはず。クラリスは騎士二人に押さえつけられている。

 視線の先では、隣国ラース帝国のアルク皇子が、憎々しげにクラリスを睨みつけている。