「海斗とどうにかならなかったら考えてたかもしれない。何か、最近褒められるんだよ、高梨君が甘いの。私と結婚しても構わないみたいなことも言われてさ。そういうの、慣れてないからすぐいい気になってしまう。うう」

 「茜。正直でよろしい。女は褒められると嬉しいのよ」

 美紀なんていっつも褒められてるからわかんないよ。私は人生初のモテ期なんだから。少しくらい許して欲しい。

 「とりあえず、今日は黙っておくんだね。仕事も最初だろうし、そんな浮かれている暇はないでしょ?高梨君もそうだけど、茜のおじいさまと社長にへ先に断った方がいいね」

 「うん。そうだね、そうだった。そのことを忘れてた」

 「そうでしょうね。茜の頭の中はね、天秤があって、片方に海斗さん、もう片方に高梨君しか乗ってないのよ。他の登場人物は強制退去させられてるけど、あんたの場合、元はと言えば全部おじいさんが関係してる。そこを正さないとどうにもなんないと思うなあ」

 「さすが美紀。すごいよ。その通り。ああ、美紀に聞いてよかった」

 「そう?お礼は駅前のパティスリーのベリータルトでいいよ?」

 相変わらずの隙のなさ。その日はタルトを買って渡したのだった。