「いい子だ。これからもっと仲良くしような。恋人として……」

 そう言うと茜の顔を上げさせてそっと唇を塞いだ。茜は驚いて目を開けた。俺は一旦唇を離してやった。

 「か、かいと……ん……んっ……」

 返事をしないでもう一度引き寄せてキス。押しつけるようにキスをして角度を変えてやると息を吐いた。
 すぐに深いキスに変えて抱き寄せる。茜の迷いがキスに現れていたが、繰り返しているうちに身体の力が抜けてもたれかかってきた。

 「……はあ……」

 茜は涙目だ。

 「徐々にいこうか……初心者マークの茜にはそのほうがいいな」

 そう言って、頭を撫でてやる。

 「……茜。腹減った。これでも急いで帰ってきたんだ。お前のことが心配でさ。全部無視するから……」

 茜はこちらをじっと見ると、背を向けてキッチンへ行った。
 
 「私もまだ食べてない。今日はショックで……心がいっぱいで何も作ってなかった」

 「何か一緒に外へ食べに行くか?」

 「……これから?だってお化粧落としちゃった」

 「大丈夫だ、茜は可愛いぞ」

 ジロッとこっちを見ている。

 「誰に会うかわかんないから、イヤ」

 「俺にはいいのかよ?」

 「……だから、海斗は家族みたいな親友なの」

 これはやはり荒療治が必要だな。茜の俺に対する意識改革が必要だとわかった。