「落ち着け。俺が蓮見商事へ行くのは、社長が正式に弁護士を入れると決めたからだ。確かにお前の異動は俺が頼んだ。お前以外の女子社員に囲まれるとかぞっとする。せっかく茜のいる会社へ行くんだ。茜とだけ仕事がしたい。それに俺の仕事をしているところをお前に見せたかった」

 茜は黙って聞いている。

 「……でも、私何も出来ないよ。法律知らないし」

 「そんなのは期待してない。事務仕事をしてもらうだけだ。俺は高梨君が入るなんて全く知らなかった。あの部長にははめられた」

 「え?」

 「茜はあいつと親しいだろ?前、飲み会の帰りあいつに送ってもらって帰ってきたのを俺はベランダから見たからな」

 「……ああ、そう言えば翌日聞いてきたよね。そうだよ、よく覚えてたね、確かに高梨君だよ!」

 「何が高梨君だよ、だ。あいつはお前に気があるだろ?」

 「海斗じゃあるまいし……私はモテません。ただの同期だよ。同じ部だし、近い関係だけど……」

 「茜は鈍い。絶対違う。男の俺から見るとよくわかる。今日のお前達を見てもわかる」

 俺はもう一度茜を抱きしめた。

 「……海斗、何なの?変だよ」