一週間後。作戦を変えた俺は蓮見商事の受付の前にいた。

 「今日からこちらの顧問弁護士になる新藤と申します。法務部長と二時からお約束をさせて頂いております」

 「お待ちくださいませ。はい、四階になりますのであちらのエレベーターでお上りください」

 「ありがとう」

 俺は会釈するとエレベーターホールへ歩いて行った。
 でかい会社だ。この会社は元々俺の祖父が訴訟を助けたことから縁が出来て続いている。

 今までは、弁護士である祖父が茜の祖父に頼まれてなにくれとなく身内同然で法務関係を手伝ってきたようだが、茜の祖父もうちの祖父もいい年だ。

 そろそろ代替わりを考えているのを知った俺はすぐに顧問弁護士になりたいと立候補した。

 茜が引越をしようと絶対に側から離さないと決めた。まずは仕事を一緒にやる。蓮見商事へ行く時には、事務は茜にさせて欲しいと爺さん経由で茜の祖父である会長に頼んだ。

 茜は知らないが、爺さん達はそのせいで茜を法務部兼務とさせたのだ。

 法務部と一緒にする総務の仕事も茜を窓口にする。他の女との接点はいらない。そうじゃないと、他の女との軋轢で茜がまた逃げる。