「何かってなに?」

 「高梨とは距離を置いているんだろうな?あいつ異動したんだろ?法務は誰になったんだ?」

 「別な法学部出身の新人君。でもすごい使える人だよ。伊藤君がびっくりしてたよ」

 そう、海斗のパラリーガルだった伊藤君は司法試験に合格して、たまに海斗の代わりにうちの法務部へ来てる。でも海斗のおじいちゃんがわからないことや難しいことがあるときは伊藤君の代わりに来てくれてるんだ。

 「……伊藤の奴。あいつも茜のこと大好きだからな」

 「うん。伊藤君面白くて大好き。うふふ。最近は買い物してたら初めてナンパされたの。嬉しかったー」

 「はあ?」

 「海斗みたいにモテるわけじゃないけど、声かけられるとか最初犯罪まがいかと思ったら違ったの……可愛いね、少し話さないって言われて……」

 海斗がこっちに回ってきて、お玉を持つ手を握った。