「じゃあ、籍入れる。お式は準備もあるし、留学している間に私がやっておく。もちろん海斗に確認しながらだけどね」
「なるほど。それもいい考えだな。結婚式はお前のためのものだ。茜のいいようにしていいぞ。それに、おばさんが騒ぎそうだ。絶対首つっこんでくるだろ。そういうの大好きだもんな」
そうだ、そうだった。ウエディングドレスとか、ママの好みになりそうな予感がする。ううう。
ふたりで立ち上がって歩き出したときだった。
海斗には死角で見えなかったと思う。後ろに黒いフードを被った男の人が急に小走りで近づいて来た。手元に光る物が見えた。私はとっさに海斗を突き飛ばした。
その男性が刃物を振りかざして海斗に向かった刃先が一瞬たじろいで、私の脇腹をかすった。鋭い痛みが走った。
「……茜!」
海斗は蹈鞴を踏んで、その男性を蹴り上げて刃物を取り上げると、周りの人に声をかけて救急車と警察を呼んでもらった。
その男が立ち上がって海斗と取っ組み合いになったので、周りにいた男性が加勢して、その人と一緒にいた女性が私の傷口を押さえてくれた。



