「いや。高梨のことがなくなっても、お前のことをおそらく諦めないだろう。会長は本気だ。自分の会社のことは何より大切なんだろう。あの様子を見ればわかるだろ?お前に他のもっと大きな会社の結婚相手を捜してくる可能性が高い」
確かに、帰り際睨まれて恩恵にあずかるとか色々言われたっけ。
「条件をのむ気になったのは、お前のためもあるが、実際興味が出てきたからだ。法務の仕事をしたり、ここ最近高梨工業のこともみたりして会社実務も面白いと思うようになった。海外取引状況を見る限り、国際法に詳しい弁護士が必要だとも思ったんだ」
「海斗がいいなら、私はついていくだけだよ。ニューヨークに私はついていけないけど、一年だよね?私、三ヶ月に一回は会いに行く。お金貯めてきたし……」
「結婚はどうする?帰ってきてからにするか?」
「うん。落ち着いてからでいいよ。婚約だけで……」
左手を掲げて大きな指輪を海斗に見せた。
「婚約だけって許嫁とあまり変わらんぞ。俺としてはお前をきちんと俺のものにしてから行きたい」



