「泥船に乗る弁護士なんているのか……?」

 「沈まないようにするのが弁護士の仕事だな。沈みそうになっているから船頭を代えたいんだろう」

 「助けたら復活して茜の縁談相手になるかもしれないだろ。助けたくない。海に落ちてもらう方がいい」

 「海斗。お前、弁護士にあるまじき態度だな」

 「じゃあ、爺さんが同じ立場だったら助けるのかよ?」

 「そうだな、わしは若い頃そういう案件を受けないようにしていた。詳しくなかったし……」

 爺さん、うそぶいたって騙されないぞ。婆さん一筋のくせに。事務所の弁護士にも自分の周辺の異性関係の仕事は受けないようにと厳命しているくせに。

 「とにかく、高梨が言うにはうちの事務所はいい事務所だと聞いているし、俺がダメなら事務所で誰か紹介してほしいと言うんだよ」

 「それは困ったな。でも蓮見はあそこの会社と取引があるんだから、助けた方がいいんじゃないのか?」