「茜さん。彼から話を聞いたと思うが、縁談のことはとりあえず一旦なかったことにさせてもらおうと思う。いいかな、高梨君」
「わかりました。俺としては残念です。早見とはうまくやれると思っていたので。ただ、政略結婚ならうちは今無理でしょう」
社長が私をちろりと見た。
「茜さん。君は……まあ、乗り気じゃなかったから聞くまでもないな」
意地悪だ。言い方ってもんがあるだろうに。
「社長。高梨君は会社にいられるんですよね?」
「早見、それは……」
高梨君が慌てたように遮った。
「それは私が決めることではないよ。もちろん追い出すつもりもない。君は一社員としては優秀なのはわかっているから縁組みもした」



