「お前、高梨が可哀想だから結婚してやるのか?え?」
「そんなわけないじゃん。そうじゃなくって……」
「そうじゃなくってなんだ?」
「う、ううん。何でもない」
「……あ、か、ね」
ひー。この名前の呼び方は昔から海斗が怒ったときにやるやつだ。ま、まずい。嫌われたくない。やっと海斗と恋人として一緒にいられるのに。どうしたら、どうしたら……怒るのやめる?
思いきって海斗の胸に飛びこんだ。背中に手を回した。
「いや。怒んないで。海斗、わ、私、海斗がいないと、いないと……」
「……いないと何だ?」
低い声で言う。まだ怒ってる?



