「ううん。大丈夫なの?」
秘書の方が入ってきて、社長は外出で戻りが少し遅れると伝えられた。
「……早見。俺、会社やめるかもしれない」
「え?」
もしかして、海斗の言っていたおうちのことかな……。
「聞かないんだな。お前知ってるのか、もしかして……」
「あ、ううん。知らないよ。ただ、おうちの会社のことかもしれないとは聞いてるけど……」
「誰から聞いたんだ?部長?」
「あ、おうちのことなの?」
「……明日あたりニュースになるかもしれない。社内で不正取引をした人間がいて、かなりの損失なんだ。父は引責辞任すると思う」
「……そうだったんだ。お兄さんが跡を継ぐの?」
「それもどうなるかわからない。息子が継いだら意味ないと言われているから……」
「それで、高梨君はそっちへ行くの?」
「うん。ここにいても噂が大きくなれば居づらくなるし、蓮見との取引も続けられるかわからない。社長次第だ。少なくともお前との縁談はなくなったと思うよ」
高梨君は辛そうに話している。彼は何も悪くないのに。



