ひー。この名前の呼び方は昔から海斗が怒ったときにやるやつだ。ま、まずい。嫌われたくない。やっと海斗と恋人として一緒にいられるのに。どうしたら、どうしたら……怒るのやめる?

 思いきって海斗の胸に飛びこんだ。背中に手を回した。

 「いや。怒んないで。海斗、わ、私、海斗がいないと、いないと……」

 「……いないと何だ?」

 低い声で言う。まだ怒ってる?

 「いないとだめになっちゃうかもしれない。最近、気付くと海斗のことばっかり考えてるの。ゆ、夢にも海斗が出てくるの。冷たくされたら、きっと私だめになるかも……」

 「ふーん。だめになるんだ。じゃあ、俺がいなくならないように茜はどうすべきだ?」

 思いきって顔を上げてみると意地悪な瞳がこちらを見てる。

 「どうして怒るの?海斗だけだよ。高梨君にはお断りするって言ったじゃない」

 「いつ断るんだよ?口ばっかりだろ。お前あいつに言い寄られてまさか少しその気があるんじゃないだろうな?」