事務所へ出ると、担当のパラリーガル伊藤から声をかけられた。

 「おはようございます」
 
 「ああ、おはよう」

 「海斗さん、何かいいことあったでしょう?その笑顔久しぶりに見ましたよ」

 「……そうか?いつも通りだけど」

 「嘘ばっかり。最近は気持ちの上下が激しくて、大丈夫かなあと心配してたんですよ。ほら、芸能プロダクションのふたりの電話攻撃や突撃訪問もあるし、見ていて大変だなあとこれでも……」

 伊藤が頭をかきながら言う。人を観察する力はこの仕事にとても大切だ。伊藤はそういうところが優れているから俺のことも気付くんだろうな。

 「ああ、ありがとう。これからも、色々あると思うが助けてくれよ」

 「ひえー。そんな笑顔でそんなこと言われるとドキドキしますよ。女だったら即落ちです。罪な人ですね、相変わらず」

 「お前は怒られたいのか、褒められたいのか一体どっちだ?」

 「ああ、ハイハイ。もちろん褒められたいです。僕は褒められて伸びーるタイプなんですよー」

 「伸びーるってお前はゴムか?」

 「虹色のトルコアイスでーす」