謝罪を口にされて、きっと取り立てて好きなところが思いつかなかったのだろうと思った。内心でがっかりしつつも、一生懸命考えてくれた彼を傷つけなくて済む言葉を探す。

「いいわよ。気にしないで」

 元々取り柄のないことは自覚している。けれど、クラウスの言葉はまだ続いた。

「具体的にどこが好きというより、俺はエルヴィアナそのものが好きなんだと思う。君が君だったから、好きになった」
「…………!」
「気の利いた回答ができず、すまない」

 クラウスらしい答えだ。『エルヴィアナそのものが好き』。この言葉のどこが気が利かないのだろう。むしろ――。

「……気を悪くしたか?」

 沈黙するエルヴィアナに、彼が心配そうに聞いてくる。

「ふ……っ。ふふ……」
「エリィ?」
「――あははっ……おかしい。それって――」

 エルヴィアナは珍しく大口を開けて笑った。口元に手を添えて笑いながら、クラウスを見据える。

「それってつまり――全部好きってことじゃない」
「……!」

 理屈ではなく、エルヴィアナそのものが好き、なんて最上の愛情表現だ。それなのに、申し訳なさそうにしているクラウスがおかしくて笑ってしまう。
 一方、クラウスはエルヴィアナが屈託なく笑う様子を見て目を瞠く。そして、ふっと目元を和らげた。

「……俺は君が、好きすぎる」

 その呟きは、楽しそうに笑うエルヴィアナの耳には届かなかった。