「どこを……好きになったの?」
「…………」

 つい気になって聞いてみる。すると、いつも即答してくる彼が、珍しく黙り込んで答えに迷った。

「それは……そうだな……」

 顎に手を添えて、真剣に考え込むクラウス。急に歯切れが悪くなって困惑した。あれだけ好き好き言っておいて、答えられないことがあるだろうか。

「考えさせてくれ」

 そう言われてちょっと不安になる。昔のエルヴィアナなら、すぐに偏った解釈をして、好きなところなどなく、嫌われているのだと勘違いしていたかもしれない。

「分かったわ。待ってる」

 でも、以前のようなすれ違いや誤解を招かないように、彼が答えてくれるまでちゃんと待つつもりだ。

「エリィは? 俺のどこが好き……なんだろう」
「……笑った顔が、好き」

 それは長いこと、エルヴィアナには見せてくれなかった顔だ。王女に笑いかけるのを見る度に、見苦しく嫉妬していたのを思い出す。

「もう一度言ってくれないか?」
「え?」

 声が小さくて聞き取れなかったのだろうか。