(……リジー。ルイス様にちゃんと渡せたのね)

 自分のことはいいのだとエルヴィアナのことばかり優先していたリジーだが、好きな人に飾り紐を贈れたなら幸いだ。

「お前も次に好きな人ができたら、渡してやるといい」

 ルーシェルは眉間に皺を寄せて、自分の作ったお粗末な出来の飾り紐を床に投げ捨てた。

「魔獣は……ニーニャは渡してあげません。隠し場所も教えません。エルヴィアナさんはずるい。あんな人、死んでしまえばいいのよ……!」

 彼女はそう言い残して部屋を飛び出して行った。

「妹が無礼を言ってすまない」
「王宮の教育は一体どうなっているんだ?」
「蝶よ花よと皆で可愛がったものだからね。まさかここまで歪んでしまったとは思わなかったけど」

 クラウスは呆れたようにため息をつき、すぐにバルコニーまで歩いてきた。そっとカーテンを開く。バルコニーでエルヴィアナはうずくまっていた。

「すまない。待たせたな――」
「うっ…………」
「エリィ!?」

 そのとき、右腕の呪いの痣が激しく痛んだ。まるで、鋭利な刃物で突き刺されているかのような鋭い痛みに顔を歪ませる。

「しっかりしろ! おい! エルヴィアナ!」

 何度もクラウスに呼びかけられ、身体を揺すられる。けれど彼の声はすぐ近くにいるのにどんどん遠ざかっていった。エルヴィアナはそのまま気絶した。