エルヴィアナのことを『レディ』と呼ぶのは、魅了魔法に当てられた取り巻き美男子たちだけ。この人たちは会って間もないから、魅了魔法をかけるような隙はなかったはず。

(どういうことなの……?)

 硬直しているエルヴィアナに、クラウスが囁く。

「王子カフェだ」
「おうじかふぇ」
「なんでも、王子のように美しい男子たちを目の保養にしながら食事を楽しむコンセプトで、巷の女性たちの間で人気らしい」

 確かに、店内には見渡す限り女性客しかいない。派手に着飾った美男子たちに甘い接客をされながら、紅茶やスイーツを楽しんでいる。

(いや、どんなチョイス!)

 真面目な顔をしてどこに連れて行かれるかと思えば、ちょっと特殊なコンセプトカフェで反応に困ってしまう。

「二名様でよろしいですか?」
「ああ」
「では、お席にご案内いたします」

 案内されたのは、ホールの中央の席。
 内装は、物語のお姫様が暮らしていそうなお城を思わせるメルヘンさで。エルヴィアナは実際に王城に入ったことがあるが、実際はもっと落ち着いた雰囲気だ。

 それにしても、女性客しかいない中にクラウスがぽつんといると、違和感がある。

「あの、どうしてこちらをお選びに?」

 まさか彼にはこういう趣味があるのだろうか。不審に思い、内緒話をするように口元に手を添えて尋ねてみる。

「君は美男子が好きなのだろう? 喜んでくれると思ったが、失敗だっただろうか」
「!」