またしても二人の間に沈黙が続く。すると、リジーと給仕がティーセットとケーキをワゴンに乗せて応接間にやって来た。

 どんよりした空気を察したリジーがこっそり耳打ちする。

「なんですかこのお葬式みたいな空気感は」

 給仕が黙々と紅茶を用意する横で、リジーがコホンと咳払いし、クラウスに目配せする。

「こ、こちらのタルト、お嬢様がお作りになったんですよ!」

 盛り下がった空気を変えるための気遣いだろう。だが、クラウスにはエルヴィアナの手作りということは内緒にしてほしいと再三言っておいたのに。ありがた迷惑だ。

「ちょっとリジー! それは言わないって約束で、」
「本当か? エリィが俺のために菓子を……」

 クラウスが感激して目を輝かせている。ああ、もう。そんな嬉しそうな反応されたら取り下げられない。恥ずかしくなってきた。

「別に、クラウス様のためって訳じゃないんだから。暇だっただけよ。勘違いしないで」

 紅潮しながら答えると、リジーが口元に手を添えて、ふふと笑う。