学園の敷地内で、取り巻きを引き連れたエルヴィアナと、そこに遠慮がちに声をかけるクラウスを見かけた。


「エルヴィアナ。次の園遊会のことで話があるんだが」
「ごめんなさい、今急いでるからまた今度にして」


 クラウスはエルヴィアナに冷たくあしらわれると、普段はぴくりとも動かない眉を、悲しげにひそめた。エルヴィアナはそのまま取り巻きたちとどこかに消え、取り残されたクラウスの背中は哀愁が漂っていた。

 でもまた別のとき。エルヴィアナが少しでも優しさを向けると、クラウスは露骨に嬉しそうにした。

 どうして。どうして嫌われ者のエルヴィアナのことを愛せるのだろう。ルーシェルは、一途に婚約者のことを恋い慕うクラウスのことが眩しく見えた。

(……エルヴィアナさんが、羨ましいですわ)

 ルーシェルはいつしか、エルヴィアナからクラウスを奪う方法ばかりを考えるようになったのだった。自分もあんな風に誰かに深く愛されてみたい、と。