「わたし、クラウス様のお部屋が見てみたい。あなたがどんな生活をしているのかちょっと興味があるわ」
「よし行こう。一刻も早く。こっちだ」

 即断。彼女のわがままならなんでも叶えてあげたい。可愛い。

 あまりの変わり身の速さに、ルイスは面白そうに笑った。三人をクラウスの部屋に案内した。最低限の家具が備えられた飾り気のない部屋。案の定ルイスには、「面白みのない部屋」だと言われた。彼の反応はすこぶるどうでもいい。

 ルイスはいつもクラウスが使っている寝台を指差して、エルヴィアナに囁きかけた。

「試しに寝ておいでよ」

 何が試しに、だ。とんでもないことをそそのかす男だと思いつつ、慌てて彼の口を塞ぐ。

「エリィに妙なことをそそのかすな」

 エルヴィアナは冗談をすぐ真に受けるタイプだ。まさかとは思うが、婚約者とはいえ男のベッドに好奇心で飛び込むなどという品のない真似を、彼女にさせられるはずがない。

 一方、エルヴィアナの視線は寝台に一点集中している。

「――エリィ?」
「!」

 彼女はびくっと肩を跳ねさせて後退した。それから、周りに汗を飛ばしながら弁明する。

「わ、えと、クラウス様のお使いになる寝台の寝心地とか匂いとか……そういうのは全然気になったりしてないから……!」
「何も言ってないが」

 クラウスは内心で悶えながら、緩んだ口元を手で押さえ、エルヴィアナの肩に手を置いた。

「いくらでも寝てくれて構わない。毎日体を清めているし、シーツも替えているから臭くはないはずだ」
「お、お構いなく……!」

 その様子を見ていたルイスは笑いながらリジーに耳打ちした。

「あの二人、いつもこんな漫才みたいなことやってるの?」
「いつもこんな感じです」
「存在がギャグだね。見ていて飽きないし、からかいがいがある」
「ほどほどになさらないと、そのうち嫌われますよ」
「はは、手厳しいな。親しみを込めてのいじりなのに」

 ルイスは昔から人をからかうのが好きだった。だが、唯一リジーに対しては頭が上がらない。将来尻に敷かれるタイプだ。