「ままは、なんでぱぱとけっこんしたのー?」

幼稚園に通い初めて間もない娘から問われる。私は笑顔で娘に答えた。

「愛してるからよ」

娘は分からないふうで、けれどキャッキャっと楽しそうにしていた。

「ぱぱー!!!」

父を呼びに走る娘に対し、父は娘の可愛さに死にそうだ。

「ねぇ白愛、娘が可愛すぎて俺、死にそう」

涙目で嬉しそうに喋る紅斗くんに対して、私は真顔でいつもの調子で答えた。

「安心して、それはないから」

「嫁が冷たい!!」

これまた別の涙を流しながら顔を抑えている紅斗くんに、呆れながらも楽しそうな彼の姿に私は微笑んだ。

高校卒業後は、あまり二人で遊ぶ機会なんてなくて、大変なことばっかりだったけれど、紅斗くんが家業を継いだと聞き、二人で喜んだ。

私も大学を卒業して、正式に紅斗くんと結婚した。

娘もでき、今では幸せ家族である。

するとチャイムが鳴る。誰だろうと思い見てみると、輝月と西園寺くんだった。

「西園寺くんと輝月が来てるよ」

紅斗くんに伝えると、彼は嫌そうな顔をする。

「なんで煉が来るんだよ……」

嫌そうなのは昔から変わっておらず、輝月には普通の態度である彼。その姿も好きだと思えた。